外傷性脳損傷(TBI)とは

TBIの症状 -運動機能障害-

運動機能障害は運動機能を司る部位である「運動野うんどうや」の損傷により起こります。
運動機能障害には主に運動⿇痺まひ運動失調症うんどうしっちょうしょうがあります。

運動⿇痺うんどうまひ

⾃分の意志で筋⾁を動かしにくくなった状態です。
筋⾁に命令を送る⼤脳⽪質だいのうひしつ脊髄せきずい末梢神経まっしょうしんけいの障害によって起こります。
運動⿇痺まひは、⿇痺まひの程度によって次のように分類されます。

⿇痺まひの程度による分類
  • 完全⿇痺かんぜんまひ
    ⾃分の意志ではまったく⾝体を動かせない状態
  • 不全⿇痺ふぜんまひ
    動かすことはできるけれど、⼗分でない状態
  • 痙性⿇痺けいせいまひ
    筋⾁が硬直して⽣じた⿇痺まひ
  • 弛緩性⿇痺しかんせいまひ
    筋⾁の緊張が緩んだことで⽣じた⿇痺まひ
⿇痺のイメージ画像

運動失調症うんどうしっちょうしょう

⾝体をスムーズに動かすための協調性が下がった状態です。
⼿⾜や体幹の運動に関わる機能に障害が起こるため、ゆっくり動かす、
真っ直ぐ動かすなどの動作が難しくなります。

運動失調症の例

⽇常⽣活の中に、

  • 起⽴時や歩⾏の際にふらつく
  • 字が書きにくくなる
  • 中⾝が⼊ったコップを持つと⼿が震える
  • ボタンがかけにくくなる
  • 箸が持ちにくくなる

などの⽀障が現れます。

運動失調症の例のイメージ画像

また、

  • ⾷べ物や飲み物を飲み込みにくくなる
  • むせやすくなる
  • ⾔葉を発しにくくなる(呂律ろれつが回らない)

といった⽀障を来すことがあります。

運動失調症の例のイメージ画像

運動失調症による⽀障は、⽬を開いているときよりも、着替えや顔を洗うなどで⽬を閉じているときの⽅が強く現れます。

運動機能障害はなぜ起こる?

運動野うんどうやを損傷したことで、運動を実⾏するための指令そのものを出せなくなったり、神経細胞どうしの伝達がうまくいかなくなったりして、筋⾁が動きにくくなり、 運動⿇痺まひ、運動失調などの症状が現れるようになります。

運動野うんどうやから発せられた指令は、 脳の中にたくさん存在する神経細胞を通じて脊髄せきずいに伝わります。

運動機能障害はなぜ起こる?のイメージ画像

脳から出た指令は脊髄せきずい内の神経細胞を介して全⾝に送られ、筋⾁へと伝達されます。
筋⾁は伝達された指令に従って、動かされます。

運動機能障害はなぜ起こる?のイメージ画像
運動野うんどうやとは?

運動に関する指令を出す、脳内の部位です。
運動野うんどうやは中央付近、頭頂部よりも少し前に位置します。
運動野うんどうやは、⼀次運動野いちじうんどうや運動前野うんどうぜんや補足運動野ほそくうんどうやから成り⽴っています。

運動機能障害はなぜ起こる?のイメージ画像 運動機能障害はなぜ起こる?のイメージ画像
⼀次運動野いちじうんどうや

各部位の筋⾁を動かすための指令を直接脊髄せきずいに送ります。それぞれの領域が対応する体の部位は、上右図のように分かれています。

運動前野うんどうぜんや

⼿や指の動きを、⽬的の運動に適した形に変化させたり、運動を⾏う⽅向を決めたりしています。

補足運動野ほそくうんどうや

運動の順番や切り替えに関わります。

TBIによる症状やその経過は、ケガの部位や程度により、それぞれの患者さんで異なります。

監修国際医療福祉⼤学医学部 脳神経外科学
教授 末廣 栄⼀ 先生